「ふたちゅ」が正しい。

30年前の学生時代に、1か月ほどインドを旅行(放浪)した。今のインドはどうだか知らないが、当時のインドは路上で日本人を見掛けると色んな行商人が声を掛けてきた。 カルカッタの路上を歩いていた時には、片言の日本語で、「ハシシッ(マリファナのこと)、ハシシッ イクラカウ?(いくらなら買う?)」と言いながら近づいてくる売人や絨毯売りの詐欺師(後で睡眠薬を飲まそうとする)がいたし、首都のデリーでは、街の中心地の公園の芝生の上で昼寝をしていると勝手に人の耳かきを始めようとするストリートの耳かき屋(ライセンスを持っている)、マッサージ氏、占い師、靴磨き屋など、日本では考えられないような職業の人がたくさんいた。

ベナレスでガンジス川の川沿いを歩いていた時には、首からお土産用のネックレスをたくさんぶら下げた、ネックレス売りのおじさんが、私に商品のネックレスの束を見せながら、

「ヒャクルピ、ヒャクルピ(100ルピーでどうだ?)」

と片言の日本語で語り掛けながらずっと付けてきた。(全く買う気ねーし、なんなら値段も聞いてねーし。だいたいなんで日本人ってわかったの?) とにかく、しつこくずっと付けてくるので、「NO」と一言だけ言うと、


「ゴジュルピ ゴジュルピ(50ルピーでどうだ?)」を連呼。

サラサラ買う気がない私に対して、相手はいきなり価格交渉に入ってくる。 無視して歩き去ろうとする私の顔色をうかがいながら彼は食い下がる。

「ふたちゅでゴジュルピ(二つまとめて50ルピーでどうだ?)」

だから要らないって、、、値段の問題じゃないから。インドの屋外にはこんな人が毎日出現するので、いちいち相手にしてはいけない。しかし、カーストで職業を決められた彼らは、自分の商品を売ることに生活が懸かっているから簡単には引き下がらない。無視して速足で歩きさろうとする私の顔色を見ながらさらに攻めてくる。おじさんは渾身の力を込め、片言の日本語かつ大声で私に言った。

「じぇーんぶ、じぇんぶ、じぇんぶでふたちゅでゴジュルピ!!」(全部どれでも、二つで50ルピーだ。買わないか!!)

そのおじさんの全身全霊を掛けたキラートークと、さっきから言ってることが何も変わってない面白さ、全然言えてないのに早口で大声で自信満々で、なおかつ文法的に最後おかしいだろって突っ込みたくなるのを堪える可笑しさで内心ウケていたのだが、私は負けずに振り切った。

前置きが長くなったが、この話を3年ぐらい前に、岩場で某開拓クライマー氏に談笑しながら話したところ、その話をいたく気に入っていただいた。氏はそれをルート名にしたいとも言う。この話をどうやってルート名にするのか、クエスチョンマークを7つぐらい並べつつ、そのことはすっかり忘れていたのだが、最近出版された瑞牆トポ上巻の、還暦岩に(170~180ページぐらい)このルートの紹介文が乗ることになった。

で、今週の土曜日は私はパートナーがいなくて一人身だったので、氏に連絡を取って開拓現場に遊びに行き、エリアを案内してもらうと同時に新しいルートでも遊ばせていただいた。また、せっかくなので、そのルートの写真も撮ってきた。(⇩これが、「じぇーんぶ・・(割愛)」)

ちなみにトポのコメント欄には、「ルート名は友人が付けた、とのこと」と書いてあるが、私が付けた訳ではない。けど、「2個」の読み方は「ふたちゅ」が正しい。なぜならルート名がこうなった経緯は上述の通りだからだ。

まあ、それはどうでもいいことなのだが、そんなことよりも、その近くにある「おいぼれランド」というエリアの「みんなが私をさがしてる」という、同氏によるルート名の方が私は秀逸だと思った。

この日は楽しく充実した一日だった。

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