最終回の今回は、ADHDな私でも「そんな自分の好きなところ」について書きたいと思います。御多分に洩れず、私も典型的な発達障害の人らしく子供の頃からおっちょこちょいで普通の人ができることができないで悩んできたので自己肯定感は低く、仕事上も私生活も「その卑屈さ、やめろ」と何度も指摘されてきました。でも長年生きてきて、そんな自分だからこそ愛おしいと思える自分がいることがわかってきたので、それを紹介して終わりにしたいと思います。
乗り越えてきたことに価値がある
私が研究所で働いていた頃、創薬の種になる新規化合物のスクリーニングなどをしていたのですが、ある時、創薬ターゲットAの化合物スクリーニングの業務を引き継ぐことになりました。ところが、そのスクリーニングアッセイ系は揮発性の高い溶媒を8連ピペットで上手に吸い取って96穴プレートに等量入れるという難しい作業があり「器用な人じゃないとできない」と言われていました。

スクリーニングの構築者は当然器用なので、難なくこなしており、引き継いだ2代目の人も器用だったのでこの系は成り立っていましたが、3代目の私は超不器用。いくら練習してもできそうにありません。この時、このスクリーニング系を作った先輩は
「ついにこの日が来たか」
と言ってスクリーニングアッセイ系の改善に取り組み始めました。「元々、器用じゃないとできないという系はいつか変えないと持続性がないと思っていた。池田さんが悪いんじゃなくて誰でもできる系にするべきだから」といって、テキパキと不器用でもできるような仕組みを考えてくれるのでした。
この態度、めちゃくちゃカッコよくないですか!?
こうやって技術は進化してきたんだなー。技術者・研究者格好よい!!!
この先輩の考え方は、その後の私に大きな影響を与えました。もちろん努力して出来ないことを克服して乗り越える必要があることもありますが、必ずしも能力改善とか努力が正解ではなく、仕組みで乗り切った方が良いものがいっぱいあると思います。「他人を変えることはできないから、自分が変われるところを変えた方が良い」とか言われますが、自分だって変えるのにも限界がある。いつまでも能力が伸びるってことはない。ペンギンは頑張っても空を飛べない。そう考えた時に、「これは自分が変わるのは諦めて仕組みで解決しよう」って解決することも大事と思って生きています。あとは、自分にはどうしてもできないことは、人に助けてもらったりお願いすることも学びました。
私はADHD的な理由で苦手なことはいっぱいありますが、おかげで生きるために数々の仕組みを作ってきたし(なんなら上の例みたいに自分は何もしてないけど他の人が仕組みを作ってくれたり)、周りの人に頼ることも覚えたので、出来ないまま乗り越えてきたことには大変な価値があると思っています。
魅力的な仲間がいる
私の近くにはギフティッド界隈や発達界隈の人が多くいますが、そういう人は発言を周りの人に十分理解してもらえないことも多く、見てて「ああ、その理解してもらえなさ、わかる」と思うし、私はそんな人がどういう意図で何を話しているか結構わかるので、多分良き理解者の一人なんじゃないかな?と思っています。発達障害やギフティッド系の人々には困ったところがある反面、私にとっては特別な魅力を持っている人が多く、そんな人々とこっそり分かり合える、というか同じ種族であると感じられるという特権を持っているのはオイシイなーと思っています。
ご自身も発達グレーゾーンで児童の発達障害を専門とされている原田先生の出ているYoutubeを引用しますが、実は発達障害系の人ばっかりだと同じ常識の元で暮らしているので、トラブルはあまり発生せずうまくやっていくことができるそうです。実体験で私もそう感じます。定型発達の人と、発達障害系の人は違う種族が同じ社会で暮らしていると思うと、実は分かりやすくやりくりの仕方が見つかるのかもしれません。
(59分18秒からその話になります)
【生きづらい】発達障害・グレーゾーンはなぜいつも不安なのか?
医療法人悠志会 パークサイドこころの発達クリニック 原田 剛志 院長
https://www.youtube.com/watch?v=8kDjUZLYOfM&list=PL_V_b0_ZDf3IOWBD97N7V89JFdEdXNNOv
あと、こっち界隈の人間を好んでくれる、変だけど?変だから?仲良くしてくれる人も意外といて、実はADHDだから人間関係に恵まれているんじゃないか!?と思うところさえあります。なので、人間関係的には実はネガティブなことじゃないんじゃないかなって思ってます。
純粋なままでしか生きられない
最後は一番の苦しさの源であり、いっそ開き直って一番良いと思っているところ。
純粋なままでしか生きられない
純粋、素直、無邪気、ずる賢くない、と言えば良いですが、
空気を読まずに行動、周りに合わせることが難しい、スマートに立ち回れない、とも言えます。あと、あまり取り上げられていないし全員がそういうタイプというわけでもないですが、多くのADHD人やグレーゾーンの人が「独りよがりの優しさや正義感が強い」という強烈な個性を持っていると思います。先ほどのリンクの原田先生の言葉を借りると、自分だけ良ければ良いとは思えず周りも良くないとキマリが悪いので、周りの人が困っていると手を差し伸べずにいられず、それが余計なおせっかいになって嫌がられたりします。あと、早稲田メンタルクリニックの益田先生の言葉を借りると、
定型発達の人は、自分の欲望が弱いので他人の欲望を模倣することによって欲望を取り込む。「あの人が欲しがっているものを私も欲しい」からスタートする
ADHDの人は、人の意見とか関係なく、自分がやりたいからやる、という内側からの情熱、みなぎるパワーが強くて、すごいなーと思うこともあるけど、怖いな、とか子供っぽいなとも思う。あと自分の意見を押し付けてくる人が多い
とのこと。これって本当にそうだなーと思っていて、会社でも「みんなのためを考えたらこうするべきだ」「こうしたい」「あの人困ってるから助けなきゃ」と思うと、自分の利益とか偉い人の機嫌とか関係なく、一生懸命自分の考えを貫いて自分のためにはデメリットしかないのに爆走して、ダメージを喰らうこととか多々あります。クライマーとしても、小鹿野の件は自分がしゃしゃり出る必要もなければ、しんどいことしかないのに、周りがどう思おうが自分はこう思う!と思ったらアクションまで止まらないのです。
ああ、めちゃくちゃ生きづらい!!こうじゃなければどんなに楽に生きれることか!
でもこれは薬を飲もうが仕組み化しようが、内なる情熱とパワーを変えることはできません。でも発達障害だろうがなんだろうが、どんな人だって何らかの生きづらさの源を抱えているはずで、私に課せられた生きづらさは、偶然これだったということでしょう。
そう思うと、全然スマートな生き方ではないけれどエネルギー量だけはたっぷり備えて生まれてきているので、独りよがりの優しさと正義感で、時に人に迷惑をかけ、時には反省して自分を押し通しすぎないようにし、時には利他的に動いて人の役に立ち、内なるエネルギーに駆り立てられて、不器用に人生を全うしようと思います。
(参照)
ADHD/ASDの長所(早稲田メンタルクリニック)
https://www.youtube.com/watch?v=9SwRMXQGPUI
【生きづらい】発達障害・グレーゾーンはなぜいつも不安なのか?
https://www.youtube.com/watch?v=8kDjUZLYOfM&list=PL_V_b0_ZDf3IOWBD97N7V89JFdEdXNNOv
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