サバージュ・ババージュの『補強』に関する疑問

この件ついて、もう一度何かを書かないといけないのはとても残念ですが、二子・二段岩壁にあるサバージュ・ババージュのホールドについてコメントしたいと思います。

昨年の12月14日、Facebookにサバージュ・ババージュでホールドが埋められたようだという投稿がありました。そのホールドは私も含めた女性が最初の核心をオリジナルとは異なるムーブで突破するために使っていたホールドだったので、真偽を確認するために、すぐに協会の理事に連絡し、1月7日の説明会に参加しました。当日は、二段岩壁の前で初登者の堀さんや協会の理事の方々がいる場で、どのように固められているか写真を見せていただき、「ホールドが今にもとれそうなくらいぐらついて危なかった」という説明もいただきましたが、固められているホールドは突起しておらず落ちて危ないようなサイズで剥がれるとは思われないこともあり、場の雰囲気は「なんの権利があってそんなことをしたんだ」という追求になっていったため、私からは強く訴求はしませんでした。この時点で、後にFacebookに投稿される「大きなコルネ」という話は一切でてこなかったはずです。またこの日の説明では堀さんが指示したとのことでしたが、「誰が作業したのか?」という質問には「それは答えられない」との回答でした。

その後、説明会に参加した経緯からRock&Snow 99号で本件についてコメントしましたが、私のコメントには「*協会側は初登者から依頼があり、状況を考察した上で、もろそうな部分を補強したとの見解(編集部)」と注釈がつけられていました。さらに3月13日、初登者がFacebookで補強の経緯についての説明を投稿しました。
Facebookの投稿

経緯:昨年春に再登した時にクイックドローのカラビナがちょうど当たる位置で岩が欠けているのを見つけました。そしてこの欠けた先が大きなコルネにつながっており、将来的に岩が大きく剥がれる可能性があると認識しました。そして昨年の二段壁整備の時に委員会に処置を依頼しました。

この文章を見て「大きなコルネって何だろう?」「補強ってどこに対してだろう?」と思いましたが、記憶に頼って考えるのは危険と判断し、3月15日二段岩壁に登って『補強』場所を確認しました。以下が『補強』されている箇所の写真です。色々な角度から確認しましたが、大きなコルネに該当する岩は見つけられず、補強されてはがれにくくなった岩は見いだせず、私を含めて何人かの女性が使っていたカチがあったところが埋められたようにしか見えませんでした。(注:リボルトで、クイックドローが『補強』箇所に当たらない位置にボルト位置が変わっています。)

当日岩場にいた人、過去にサバージュ・ババージュを登った人、ちょうど『補強』される前後にサバージュをトライし続けているクライマーなどに話を伺いましたが、「大きなコルネ??ってなんだろう、って思った」「どこが大きく剥がれそうだったのか全く分からない」「ちょっと無理がある説明なのでは」と、皆さん疑問に思われているようでした。一方で「何か言っても、また新しい説明があって平行線をたどるだけでポジティブな解決につながらない」「SNSでは色んな横やりが入るし、一般人が何か言うのは危険だし不利」と、意見することはなく静観したいと思われているようでした。

小鹿野クライミング協会は、クライミング界で影響力のある著明なクライマーや、初登者、弁護士もいて、自治体とのつながりもあり、協会側にそのような気持ちがなくても一般人からは権威的な存在と映ります。そんな中、一般人クライマーは素朴な疑問や意見があっても、権威に対する萎縮から簡単には発言しにくくなる傾向は避けられないと思います。私自身もこの投稿をすることは、正直とても怖いです。一方で、協会のメンバーも一般のクライマーも、望んでいることは一つで、皆で二子を将来もずっと楽しく真剣に登れる岩場として維持したい、誰もが率直に意見して対話できる環境を作って、出来るだけ多くの人が納得する方法で二子の維持につながることをしたい、ということだと思います。

今回のサバージュ・ババージュの件について、私が疑問に思っているにも関わらずそれを示さないでいると、今後協会に対して意見や疑問を持った人がいても「過去のこともあるし、一般人は口出ししないに限るな」と萎縮を助長してしまうことになると思います。それは、クライマーの間で素直に意見するために必要な心理的安全性の崩壊であり、協会を含めた皆が望んでいないことだと思います。現在そして未来のクライマーが、自分たちでクライミング文化を築いていくためには、積極的に思ったことを発言できる環境が不可欠と思いますので、私は今回自分の感じた疑問については、ちゃんと伝えたいと思います。

  • なぜ、1月7日には説明されなかった「大きなコルネ」の崩壊リスクが後日発信されたのでしょうか。また、大きなコルネとは写真で具体的にどこを指しているのでしょうか。私には見つけられませんでした。
  • 埋められたホールドは、雨で流されることもなく、男性でもムーブを試しているときに触りたくなるようなホールドだったので、少なからずチョークがついていたと思われます。なぜチョーク跡をみて「誰かが使っているのでは?」と疑い、現在登っている人たちに確認しなかったのでしょうか?これは、意図的ではなく埋めたとしても、事前に今のクライマーに確認すれば使用されているホールドであることは確認できたことですし、補強をするにしても他の方法を検討するべきか議論できたと思います。
  • なぜRock&Snowの私の投稿に対して、事前に協会の方がレビューをして注釈をつけることができたのでしょうか?私自身については1点のみですが、複数注釈をつけられていた箇所については、多くのクライマーがむしろ不審に感じています。

私が自分の疑問を正直に発信することで、協会の方もそうでない方も、忖度することなく自分の意見を言えるきっかけになれば幸いです。

最後に、Rock&Snowに端を発して、小鹿野町の方々が二子山での登攀の可否について議論しかねない状況だと伺い、これまで実際どのような意見が交わされているかを知るために小鹿野町議会の会議録を確認しました。とても長いですが、「クライミング」で検索すれば関連する箇所を読めますので、是非ご一読ください。クライマーが必ずしも受け入れられているわけではないことを自覚し、地元の方々に迷惑をかけないように一人一人が注意を払い、すこしでも地元の経済に貢献する必要があることを考えさせられました。協会だけでなく、個々人が高い意識で地元の方々の目線を考えることが岩場の継続に不可欠だと思います。

久保 結花

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