体重コントロールの謎 最終回《思いもよらない着地点》

《M》

《最後に現れた体重コントロールの謎》
過去に炭水化物抜きダイエットと巡り合い、結果として13㎏減らすことができた私でしたが、81㎏から68㎏まで落ちた時点で満足し、その後は減量らしいことをしてきませんでした。ところが、ロクに減量らしいことをしておらず、肩を痛めてロクに登れない期間があったりお菓子を日常的に食べていた直近の6年間で、平均体重が4㎏落ちて現在は63~65㎏で推移しています。結果オーライとは言え、過去に自分が積み上げてきた研究結果から考えると起こらないはずのことが起きていたので、長らく不思議に思っていました。当時の私の頭の中には「減量=3食炭水化物抜き」という発想しかなかったからです。
《謎の正体》
この体重減少は、それこそ最後の『体重コントロールの謎』となったわけですが、振り返ってみると6年前以前とそれ以降では、結婚したことにより生活習慣が大きく変わったことと、食生活が大きく変わったという変化がありました。栄養マニアのY花の食事はそれまで私が食べてきた外食中心の食事に比べると超健康的なので、「これが関係しているのかなぁ」ぐらいに思っていましたが、最近私がバイブルにしている「自律神経の話」という本を読んでわかったことは、体重が自然に減ってきた理由が食生活の改善だけでなく、生活習慣を改善したことと関係しているということでした。しかもY花によれば自律神経の話は昔からとっくに知っていて、それゆえ私の生活習慣をちょっとずつ強制的に改善させてきたというのです。自律神経の話
Y花の性格を考えると多分本当だと思うので、最終的に私の体重を良い感じに落ち着かせられたのはY花様のおかげということになり、感謝してもし切れないわけですが、そもそも生活習慣を改善することでどうして無駄な脂肪が減ったり体重が維持できるのかという疑問が残ります。なので、整理の意味を込めこの本を読みながら謎を解いてみました。

『間違いなく規則正しかった私の生活習慣』
独身時代の私は、深夜0時から1時ぐらいに風呂に入り2時過ぎに寝て朝は8時ぐらいに起きる生活を20年ぐらい続けていました。慢性的な睡眠不足のため、日中はたいがい眠気と闘っていましたが、夜型の私にとっては「規則正しい生活」に違いなく、変える理由も改善する理由もありませんでした。
『医者が言ってる規則正しい生活習慣の本質的な意味』
しかし一般的にお医者さんが『健康的で体に良い』という文脈で語る時の「規則正しい生活習慣」というのは、詰まるところ「自律神経を整えるための」規則正しい生活習慣の事を指しています。いくら私のような人が「規則正しき生活習慣」を主張しても、自律神経のリズムが整う形になってないと意味がないようです。別に医者が駄目というからダメなのではなく、そうしないと体が良い方向に反応しないということです。従うべきは「自律神経のリズム」であり、これは意志でコントロールできないから、せめて生活習慣を自律神経に合わせることで、そのリズムをバランスよく保ちましょうという発想が必要なのでした。

尚、自律神経は以前の記事で書いたホメオスタシスにおける調節機能を司(つかさど)っていて、交換神経と副交感神経で構成され、それぞれが次の図に示すようなリズムを持って機能しています。
自律神経のバランス

交感神経は日中に活動的になる時に働く神経で、これが優位になると心身共に興奮状態になりますが、血管が収縮し血流は悪くなります。一方、副交感神経が優位になるとリラックスした状態となり、腸を働かせて消化・吸収を促進したり、疲労を回復させる方向に働きます。これらが、体内時計と密接に関係しながらバランスよく働くことで、体の調子が整えられているのだそうです。

《自律神経のリズムが乱れると・・》
なので、自律神経のリズムが乱れて深夜に副交感神経が働かない状態を作り続けると、眠りが浅くなって疲労も取れず、日中になっても眠い状態が続きます。そもそも、男性は30代(女性は40代)になると副交感神経の働きが急激に落ち、若い頃のように回復しなくなるのですが、それに輪をかけて自律神経を乱すような生活習慣を続けていることで、「疲労が取れない→練習増やせない→パフォーマンス上がらない」、または、「ケガする→なかなか治らない→長期離脱でパフォーマンス下がる」という負のスパイラルに突入してしまいます。

《生活習慣を改善して、自律神経のリズムを整えると・・》
私の独身時代の『規則正しい生活』には、「深夜にコーヒーを飲む。深夜に熱い風呂に入る。深夜に仕事する。」等が含まれており、本来副交感神経を働かせて回復に努める時間帯に交感神経が優位になる緊張型睡眠となっていました。そのため慢性的な疲労を抱え、週末に岩場に行くと平日はもはや疲れてジムに行けなくなっていましたが、これを23時就寝7時起床にして数年経過した頃には、日中に眠くなることはなく週末に連登しても平日にジム1日、ヨガ一日行けるようになりました。いつの間にか「生活習慣の改善→疲労の回復が早まる→運動量増やせる→体重落ちてパフォーマンス上がる」という正のスパイラルに入れていたようです。

《自律神経のリズムが乱れると・・その②》
もう一つ、自律神経のリズムが乱れるとよくないことがありました。腸を動かすのは主に副交感神経で、自律神経が乱れると腸内環境が悪化して消化・吸収の働きが弱まり、必要な栄養素が吸収されない上に代謝が落ち「内臓脂肪」が蓄積されやすくなります。以前は完全な「脂肪が蓄積されやすい体」でしたが、生活のリズムを改善したことで、ここも改善され絞れてきたようです。尚、最近は腰痛対策として背筋の筋トレだけはしていますが、それ以外は特にしていないのに背中が絞れててビックリです。

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《結論》
結論として、自律神経を整えるための生活習慣に改善したことと、栄養バランスの摂れた食生活に改善したことが、今の体調と体重の維持に繋がっているとわかったのですが、もしも若い頃からバランスの良い食事を取り規則正しい生活習慣を送っていれば、そもそも体重を無駄に81㎏まで増やしてしまうこともなく、20年前から今と同じ体重でクライミングを始め、その状態でここまで続けてこれたのではないかと思うのです。

19年もかけてわざわざ減量の研究をする必要もなければ、最後に何十時間も掛けてこんな記事をまとめて書く必要もなく、その時間にジムに行ったり筋トレしたりして有効に時間を使えたはずでした。ここまで書いていうのもなんですが、体重の減らし方を知っているのは偉くもなんともなく、身から出た錆を落とすのに学ばざるを得なかっただけのこと。

本当は「体重の減らし方なんか知らない」「体重なんて関係ないよ」と言いながら、いい歳になっても楽しくハイパフォーマンスで登り続ける人々が、クライマーとしては一番正しい在り方なのではないかと思います。

アリエッティ

その代表(↑)。最後に風邪を引いたのは中学生の時だそうです。(ほんとかよ?!)

(完)

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