函館に着いた時にリストアップした北海道でやりたいことは、
・利尻島に行ってウニを食べる
・美瑛(びえい)町をドライブ
・美唄(びばい)市の友人農家で米を買う
・十勝をドライブ
・行けたら知床に行く
・百名山のどれかに登る
でした。知人から美瑛の景色がとてもすごいと聞き、別の知人からは十勝の景色はもっとすごいと聞いていたので、どんだけ凄いのかを車を走らせて見てきたいと思ったからです。ただし、知床は遠いので別の機会でもよく百名山も絶対登りたいわけではなかったので、最初のプランは、
・利尻島に行ってウニを食べる
・美瑛と十勝をドライブする
・帰りに美唄で米を買って帰る
(なんだ、車で走れば北海道旅行3日で終わるじゃん…)でした。
■9月16日(水)
一人旅を始めてから朝早く目覚めて直ぐに活動を開始するようになりましたが、午前7時の函館の外気は17℃。前日の函館山の寒さといい、東京との緯度の違いを如実に感じます。この分だと稚内はもっと寒く、後回しにしない方がいいと思い、直ぐに利尻に向かうことにしました。実際、あとで調べてみると東京の緯度は35.7度、函館の緯度は41.5。6度の違いは相当デカいのですが、稚内の緯度は45.2度なので、さらに3.7度も違います。

《16日のドライブ日記》
美唄の知人(やまびこ農園)にも、この日の内に稚内方面を目指すことと途中で立ち寄ることを伝え、目的地をやまびこ農園に設定して(342㎞4時間)車を走らせました。ちなみに、杉並の我が家から名古屋駅までが343㎞ですので、函館と美唄は、関東と東海地方ぐらい違います。

GoogleMapが示す函館から美唄までの経路は海岸近くを辿っており、運転中にチラチラ見える周囲の景色がとにかく素晴らしいので、途中で豊浦噴火湾パーキングエリアからの「豊浦町 噴火湾展望公園」と、有珠山(うすざん)SAで休憩し、散策したり景色を見て楽しんでいたのですが、こんな聞いたことの無いような無名の場所で景色がこれだけきれいだという事は、北海道はこれがディフォルトなのではないかと思い始め、いちいち停まって景色を味わっているとキリがないことに気づき始めました。

有珠山SAからの景色
もともとの旅の目的は、「気になる所を全部回って回収」して帰るつもりだったのですが、行動すればするするほど気になる所が増える一方です。洞爺湖も支笏湖も一旦は通過。ウポポイの標識も、名前の響きで私を呼んでいる気がしましたが、とりあえず見なかったことにして素通りしてきました。
《やまびこ農園》
「稚内に行くので途中で立ち寄ります。」「帰りにお米を買って帰ります」というスタンスで、一瞬立ち寄って駆け抜けていくはずだった『やまびこ農園』ですが、気付いた時にはその農園の畑でトウモロコシを刈り取っていました。

ところでみなさん、トウモロコシの先端に付いてる毛の一本一本が、トウモロコシの食べる部分の一粒一粒に全部一本づつ繋がってるって知ってました?

トウモロコシ畑で野菜部部長から聞いた受粉の仕組みが面白かったので、ネットから画像を拝借して改めてまとめると、てっぺんにある雄穂から花粉が出て、これが風で落ちて下の絹糸に着くと受粉して一粒一粒のトウモロコシの実ができるのだそうです。受粉できなかった絹糸の先についたところには実がならず、黄色い粒の無い歯抜け状態になるようです。

で、この日にトウモロコシの周りを飛んでいたのが、花粉団子を足に付けたミツバチ。ハチは花粉を取りに来て、それを丸めて足に付けて巣に持ち帰ます。ネットで調べる限り、ハチがいなくてもトウモロコシは受粉すると書いてありますが、現場でハチの動きを見ている限り、受粉に関与はしているだろうと思いました。

ミツバチはトウモロコシの受粉の時期を知っていて、花粉を見事にくすめ取った上にそれを器用に丸めて団子状にしたものを自分の足にくっ付け、落とすことなく巣まで飛んで行く訳ですが、トウモロコシからハチの花粉団子に至る一連の話を聞いた時点で、「神様っているよね」って話になりました。どう考えたって出来すぎでしょ。教科書とかネットで見ている分には「うんうん」で終わるけど、実際そうした生態系が見事に成り立っていることに直面すると、何者かの意図と全体設計なくして、こんなの成立しねーだろと思わずにはいられません。
私が農家の野菜部部長に聞くまで50年間も知らずにいたトウモロコシの花粉の秘密をハチは誰もが知っており、花粉の性質も、丸め方も、足にくっ付ける方法も、それが自分達の食べ物になることも全部最初から知っている。トウモロコシはトウモロコシで、受粉の仕組みが風頼み。それで、あのフサフサの毛の一本一本に何十cmも上から落ちてきた花粉が必ず付着する仕組みになっているって凄くない?
アイヌの集落に行くと、アイヌが「天から役目なしに降ろされたものは一つもない」という言葉を残していてそれがポスターなどになっているのが目に付くのですが、本当に全部役目を持ってできていて、それらが連携して生態系を作っているようでした。都会にいるとあんまり考えないのですが、農家の人達はそうしたことを普通に知っていて、心のどこかで「土地は神様に与えられたもの」、「自分達がそこで作物を作るのは使命」という感覚を受け継いで来ているようでした。その後に回った北海道は、どこに行っても「なんでこんな所で農業とか漁業をしてるんだ!?」と思うような土地がたくさんあるのですが、生活の合理性より「使命」としてやってると考えると納得できます。

さて、畑で取れた野菜の一部は、直ぐに直売所に並べられ、多くの人が車でやってきていつの間にか買って行くようなのですが、
「美唄遠~い!」「直売所行くのは無~理~😢」
という方のためにも、オンラインショップが用意されており、

QRコードを読み取ると、こんなサイトが出て来て、

「15kgの野菜買いまーす」、といってカートに入れて注文すれば、

送料無料で、こんな大きな野菜がどっさり家に届いたりします。
そうこうして農家の直売所の仕組みや通販の仕組みを学びつつ、畑を歩き全ての野菜を見て回り、倉庫やら仕事場やらを案内してもらったのですが、次に気付いた時には取れたばかりの野菜で作った夕飯をご馳走していただいており、更には農園長と野菜部部長のヤッシーに北海道の主要な旅先情報を教えていただいておりました。

〔旅の作戦会議〕
その晩、他の友人とも連絡を取り合ってわかったことなのですが、利尻島には稚内からフェリーで行くけど車で行くと片道20,000円かかるので、普通は稚内の無料駐車場に車を置いてバックパックでフェリーに乗る。宿泊は、「うみねこゲストハウス」がお勧めだが、早目に予約をしておいた方が良い。ということで、早速その場でゲストハウスに電話をしたのですが、週末がシルバーウィークだったこともあり、26日まで予約でいっぱいという返事が返ってきました。なので急遽予定を変更し、東の方から回って、最後に稚内から利尻に向かうことにしました。行き先をなんとなくしか決めず、なんとなくやりたいことを持っているだけの私の「曖昧さ」は、こういう時には「柔軟性」と呼び名が変わり、功を奏します。尚、この日はあつかましくも宿泊までさせていただき、その後も、野菜部部長のヤッシーには、北海道旅行中の旅情報の継続的なサポートをしていただきました。

最後に、お母さまから「これを飲ませたい!」と言って、トマトジュースをいただきました。実はわたくしトマトジュースが大の苦手で、小学生の時に飲んだのが不味過ぎたためか、それ以来飲んだことがなかったのですが、その「飲ませたい」に農家としての勝負魂が込められているのがわかりました。相手がトマト嫌いだろうがなんだろうが、「これは絶対飲める」「美味いと言わせられる」「まず飲んで見ろ」、「絶対美味くて飲めるから、お前の意向など聞く必要がない」という強い意志を感じます。その圧に負けてひと口飲んでみると、確かにスッキリして飲みやすく美味しい。こうして私のトマジューPTSDは図らずも荒療治によって解消され、残りを水筒に入れて旅のお供にしたのでした。
翌日にやまびこ農園を立ち去る私の車。
「帰りに立ち寄りますからね~」
(つづく)


コメント